関東ロームとは?土の特徴や強度から注意点まで解説

関東ロームとは、関東地方に広く分布する砂と粘土が混ざった土壌で、強くしっかりとした地盤が特徴です。一度崩してしまうと性質が変化するため、地盤調査も適切な方法を選ぶ必要があります。

宅地の地盤調査などで地盤の説明を受ける際、さまざまな土壌の名前を耳にします。土壌の種類によって特徴は異なり、場合によっては地盤改良が必要になります。
関東地方に広く分布し、宅地の地盤として良好と言われている赤土を関東ロームと呼びます。本記事では関東ロームについて詳しく解説します。

関東ロームとは?
関東ロームとは、関東地方に広く分布しているロームを指します。ロームとは砂と粘土が混じり合った粘性質の高い土壌区分で、ロームが重なり合った地層を「ローム層」と呼びます。
その成因は土地によってさまざまですが、日本列島におけるロームは約13万~2万年前の、火山活動が盛んだった時代に降り積もった火山灰が成因である場合がほとんどです。 特に、関東地方では富士山や箱根連山などの火山活動により作られたとされています。

ロームは日本全国に分布しています。火山が吐き出す火山灰は、それぞれ成分に特徴があるため、それによって形成されたロームも地域によって呼び名が変わります。九州のシラスと関東ロームがその代表格です。

ロームは非常に古く安定した地層で、その火山灰の堆積した時代は大きく分けて2つです。1つは、海水面が比較的高い13万~6万年前に、一面の湿原に火山灰が降り積もって形成されたもので「常総粘土層」と呼びます。

2つ目は約6~2万年前の氷河期です。氷河期には、存在する水のほとんどが凍ることで海水面が急激に下がります。氷河期後も1~2万年前まで状態は続き、その間も火山活動は活発だったため、陸地に火山灰が降り積もり、関東ローム層を形成しました。

関東ローム層は、この頃の火山活動で形成された火山灰質粘性土です。神奈川や東京、埼玉に分布し、主に富士・箱根火山から噴出した火山灰が堆積したものです。

形成された時代が古い順から、40万年前~約13万年前の多摩ローム層(多摩段丘)、13万年前~約8万年前の下末吉ローム層(下末吉段丘)、8万年前~4万年前の武蔵野ローム層(武蔵野段丘)、そして4万年前~約1万5,000年前の立川ローム層(立川段丘)の4つに分類されています。

関東ロームの特徴は?
関東ローム層にはどんな特徴があるのでしょうか。その3つのポイントを紹介します。

①土質
関東ローム層は、火山灰質粘性土で含水比が高く、かつ透水性が高い特徴があります。粘性土とは、粘り気のある土の中でもそれぞれの粒径が75μm未満の細粒土を指します。

関東ロームの土粒子は、土粒子同士が小さな集合体を形成している団粒構造をしているため、小さな集合体と集合体の間に隙間があります。
粘性土は、一般的に含水比が高く透水性が低くなりますが、団粒構造は土が細かい粒子のままである単粒構造に比べて、透水性が高くなります。

②強度
ローム層は一般的に、土粒子間の結合が非常に強固なため、強くしっかりした地盤をつくり、戸建て住宅などの支持地盤として非常に適していると言われています。
ところが、掘削などでこの土粒子間の結合を解いてしまうと、強度が著しく低下します。このため、雨で溶け出したり土砂崩れなどで一度崩壊されたりすると、粒子の結合が切れてしまうため、再度堆積してももとのように固い地盤に戻ることはできなくなってしまいます。
特に建替えなどで、旧建物の基礎や配管などを撤去する際に掘り返してしまうと、ローム層本来の強度が弱まってしまい、不同沈下などの地盤事故につながってしまうので、注意が必要となります。

また、粘性土である関東ロームが厚く堆積する地域では地震の揺れが増幅され、関東ローム層の厚い地域では地震の揺れに弱い場合があります。また、東日本大震災の折、関東ロームが分布する地域では、土砂崩れが発生するなどの被害が多数報告されています。土砂崩れが発生しやすい山地や丘陵地の斜面では、特に注意が必要です。

③黒ボク土
関東ロームは赤褐色が特徴ですが、上層部分にはよく黒い土が堆積しているのが確認できます。その感触がボクボクしていることから、「黒ボク土」という名がついたといわれています。

黒ボク土も赤褐色の関東ロームと由来は同じ火山灰ですが、黒ボク土は、そこに植物が茂り、枯れ、土に還った腐食物質(有機物質)を多く含むことによって、黒く変色したものです。

保水性と透水性に優れているという関東ロームの特性に、さらに有機物質が含まれているとなると、一見肥沃で畑に適した土のように思えるでしょう。
しかし、黒ボク土には、鉄とアルミニウムが多く含まれており、地中のリン酸と結合し固定化してしまうという特性があります。
土が固定化してしまうと、植物の開花や結実を促進したり根を伸ばしたり、発芽や花芽のつきをよくする働きがあるリン酸を吸収しづらくなります。その結果、植物が生育不良になってしまいます。
関東地方は農作物が育たない不毛地帯と長らく呼ばれてきたのは、この黒ボク土が理由です。

関東ロームの注意点は?
ここからは、関東ローム層に関する3つの注意点について解説します。

①埋設谷
関東ローム層が形成される以前、長い氷河期がありました。その氷河期が終わったときに入り江だった場所はもともと谷だった場所です。

かつての入り海だったところに軟弱な地層が堆積して陸地化した谷地や低地が多くなっています。これを「埋設谷」と呼びます。ここは「軟弱な地層」と先述したとおり、地耐力が低く柔らかく、建物を建てるにはあまり向きません。

②盛土・土砂災害で軟弱地盤になっている
関東ローム自体は、結合力の強い地盤です。しかし、盛土や土砂災害によって再堆積した場所は土粒子間の結合が切れてしまっており、かつての関東ローム層とは異なる軟弱な地盤になっています。こういった場合、土壌改良工事などを実施する必要があるでしょう。

市町村役場では、調査結果を地質断面図や地盤種別図などにまとめているところもあります。気になる場合は一度最寄りの役場で確認してみましょう。

③一度崩れると強度の低下が激しい
関東ロームは世田谷区や目黒区など、人気の住宅地を覆っています。関東ロームは、本来の状態であれば宅地の地盤として良好ですが、先述したとおり、一度その土粒子の結合が解かれてしまうと強度が著しく低下してしまうという特徴があります。

注意したいのは斜面になっている地域です。関東ロームの地域に分布している住宅地でも、平らな宅地を確保するために斜面の一部を切り崩し、その土を盛って地面を平らにするという処置が取られている場合があります。

こういった処置が一度行われた場所は、土粒子の結合が解かれてもろくなってしまっている危険性があるため、住宅を建てる際は注意が必要です。

こちらの記事では、地盤改良が必要な土地について解説しています。必要のない土地の特徴も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ださい。 

まとめ

関東ロームの特徴について解説しました。関東ロームは土粒子の結合が強いという土壌の特徴を持ち、強固で頑丈な地盤は宅地に向いているとされています。しかし、何らかの要因で一度崩されてしまうと、軟弱な地盤となってしまう特徴もあわせ持ちます。
そのため、関東ロームに分布する地域の地盤調査をする際は、その特徴に合わせた方法を選択する必要があります。

戸建て住宅の地盤調査で一般的に採用されているSWS試験は、先端にスクリューのついた鉄の棒を回転させながら土壌に差し込んでいく調査方法です。結合されている土を壊しながら調査するため実際よりも弱い数値が出やすく、関東ロームの安定性を正しく計測することには不向きといえます。

一方で、表面波探査法は検出器を地表に設置し、面で行う調査方法です。非破壊式で土壌を壊さないため、関東ロームの安定性を計測するのに適しており、正確な数値が得られやすい特徴があります。

表面波探査法とスクリューウエイト貫入試験(SWS試験)との違いは、こちらをご確認ください。

住宅向け地盤調査専門会社ビイックでは、地盤調査に表面波探査法を採用しています。正確精緻で無駄のない地盤調査をお求めの方は、ぜひビイックにお問い合わせください。

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