各自治体では地域防災計画を公表しており、発災時にどのような対応をとるのかについて、ほとんどの自治体で公表されています。
もしも大規模な災害が発生した場合には避難所へ、そう考えている方は多いと思いますが、多くの場合、自治体の考え方は異なります。
基本的には、避難所へ避難するのではなく、自宅待機(避難)を選択して自宅に居て欲しい、これが多くの自治体における本音です。
これは、各自治体において避難が必要な全住民を収容可能な避難所を準備できていないことからくる問題であり、実際にこれまでに生じた災害時にも要避難地域のすべての住民が避難できた、などという情報は大規模災害時にはありません。
避難所に入れなかった方がどうするのか、というと、自宅で待機する方もいらっしゃいますが、多くの場合では近隣の親戚・知人の家に避難する、避難所ではない場所でテントを張って生活する、車を止めてその中で生活する、ということを行っています。また、民間企業がスペースを開放して、要避難者を受け入れるなどということもあります。
これは実際に生じた災害の種類にもよりますが、防災用品を備えていても、一般の家庭が被災した場合、そこに住み続けられる状態にあるのか、ということについて住民の方には判断ができないことと、自宅は大丈夫なのかという恐怖感から自宅にいることに危険を感じる、ということが生じるためです。
地震発生時には、数多く発生する地震で、いちいち飛び起きて家の状況を確認しなければいけないなど、神経が磨り減ることであるのは間違いありません。
同様に、洪水や津波によって浸水被害にあった場合には、家の中に流れ込んだ泥水に様々なものが紛れ混んでいる可能性があり、水が引いた後もにおいが残る、泥が残る、そして感染症などの原因となりかねないことから、片付けができない間は、住み続けることは難しいと判断されるためです。
こうした事例から、被災時には自宅避難を行うには、どうしても限界があります。
東日本大震災の時、津波到達エリアでは数多くの人達が自宅を失い、また住める状況ではなくなり避難所へと集まりました。
結果として、津波に被災せずに残っていた避難所はあっという間にキャパシティをはるかにオーバーしてしまい、あぶれた人たちは利用できる別の避難場所を探したり、二次避難先を探すなどの対応に追われることとなり、同時に避難所が優先される食料の調達に追われることにもなったのです。
各々の避難所に送られる食糧は、その避難所に登録されている人数分(避難している人数分ではありません)というのが基本です。
過去に幾度もの地震や津波を経験していた東北地方沿岸部でも、このような事態が生じたのです。
これまでに大きな災害を経験したことがなく、災害慣れしていない大都市圏で、同様の事態が生じた時にどうなるのか、想像することは難しくありません。
また、熊本地震の際には、被災したエリアが限定されており、周囲には被害の大きくなかった福岡県などが控えていましたから二次避難や物資の搬入作業などは比較的迅速に実施されました。
ゆえに東日本大震災で道路が寸断された場所のように孤立する集落が生じることは、ほぼありませんでした。
それでも公費解体などの災害対応が終了するまで2年かかりましたが。
一方で、能登半島地震では完全に交通網が寸断されることとなり、様々な方法で資材搬入がなされることになりました。このさい、比較的半島南部に近いエリアには、早めに復旧が行われ、潤沢な物資が搬入されることになりましたが、半島先端部に近い場所にはいまだに十分な物資が届かず、被災地における復興速度の格差が生じていました。
この格差は、半年たった今でも続いており、輪島市などでは水道の復旧がなされていますが、珠洲市などではいまだに復旧しておらず、復旧作業の妨げになっています。
正直なところ、国や県は以前に地震が発生して以降の間に何をやっていたんだと、聞きたくなるような状況です。
今後、発生が予想されている地震等の災害についても、能登半島の地震で生じたことと同様なことが生じる可能性があります。
主要幹線以外に隣接する市町村と結びついていない集落は、多く存在していますし、河川にかかる橋梁が使えなくなった時点で孤立する集落も存在します。関東圏や近畿圏、中部圏でもそうした場所が存在しています。
災害の種類にもよりますが、孤立しやすい場所の避難場所は案外、被災しやすい場所にあります。これは大都市圏でも他人事ではなく、内水氾濫時や外水氾濫時に避難所が真っ先に利用できなくなる場所は多々存在しています。これは、多くの場合避難所として指定されている学校という、近隣の人が行きやすい場所にある指定避難場所からくる弊害です。
確かに学校等の建物は、多くの場合は耐震改修工事が済んでいる、ないしは十分な耐震性を持つ建物に建て替えられています。
しかし、災害の発生状況によってはそこまでたどり着くことが困難になる場合があります。
内水・外水氾濫時、浸水予想で1mを超える場所が平地ではかなりの範囲となっています。
浸水高さが0.5mあれば、避難することはほぼ不可能となります。
こうしたことの考えて、要望を言わせてもらえば、地震災害時と洪水災害時の避難所は別の場所を設定しておく必要がある、そう考えられます。
また、多くの自治体では、設置されている防災倉庫は、平地にあるプレハブ小屋や物置である自治体が多い、と感じています。
平地にある倉庫=内水・外水氾濫時には利用不可、となる可能性が高い場所です。
大地震時にも建物などの倒壊や液状化の発生などによって、近づけないことや利用できなくなる可能性があります。
最近は役所の庁舎が耐震化と高層化している場所も多いので、本来であればそうした場所にこそ支援物資を保管しておいて欲しいと思うのですが、役所の上層階にそのような倉庫を設けているなどの話はほとんど聞きません。
地震に備えている。一例をあげると高知県黒潮町では、津波を考慮して設けられている避難所に、避難予定の住民たちの避難用品が、おかれているという事例があります。
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kochi/20240201/8010019726.html
こうした地域に即した取組みを他の場所でも考えて欲しいと思います。
災害に直面することが、珍しい出来事ではなくなりつつある今、お住まいの地域の地図をもう一度見直して、自治体のハザードマップと照らし合わせ、現在の指定避難場所に安全にたどり着けるかどうかについて、あらかじめご家族で検討しておいていただけると非常時に大いに役に立つ、そう考えています。