普段とは毛並みの違う話、とお考えになるかもしれませんが、少々お付き合いください。
令和4年6月17日に「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律(令和4年法律第69号)」が公布されました。
国土交通省発行、「改正建築物省エネ法について」リーフレットより引用
上の図について簡単にまとめると2025年に住宅の省エネ基準への適合を義務化するとともに、2030年以降に新築される住宅にZEH・ZEB基準を確保する。ということになります。
地球温暖化対策に資するため、一般家庭からのCO2排出量を減少させることを目的とした法律です。
ここで、こうした話を取り上げた理由は、省エネ機能を高めることは、建築に必要な材料が増えるために、住宅そのものが重くなることを意味しているからです。なぜ重くなるのか、については下図をご参照ください。
*出典:国土交通省「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方(第三次答申)及び建築基準制度のあり方(第四次答申)について(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001487807.pdf)
参考事例ではありますが、上図に記載があるように、基準の変更によって断熱材の使用量増加や窓の高性能化が必要となり、住宅の広さ等によっても異なりますが住宅荷重は基本的には重くなることが考えられます。
住宅の設計荷重が増加することにより、今まで以上に地盤調査結果から地盤改良工事を検討する案件が増えるリスクが想定されます。
次に、地震に対する考え方に触れます。
上図に記載があるように、建物の重量が重くなると建物に加わる地震力が大きくなります。
そのため、地震発生が発生したときに、被害が大きくなる可能性があります。より地震に対して耐震性の高い住宅を設計する必要性が生じます。
そして、2025年よりも2030年の基準が厳しくなる。
この二つの改正には、大きな変化があります。2025年基準に対して、ZEH基準では、ゼロエネルギーを主眼とするため必要とされるものがさらに増えるからです。そして、2025年の基準で建てた家は、2030年には基準法不適合になる可能性があるということも意味しています。このことは重要な意味を持ちますので、注意が必要です。
今回の法改正では、省エネとしていますが、グリーン化事業であることから長期優良住宅で必要とされる性能が標準となる可能性があり、そうなると住宅の新築時には現在の基準よりも多くの性能を満たすことが必要となります。
この法律が施行されることでどれだけの影響が生じるのか、については今後発行される参考書である、新しい「構造関係技術基準解説書」が発行されるのを待ってから、再度触れたいと思います。
また、耐震改修を含むリフォームについても今後、明確な指針が公表されたのちに、触れていきたいと思っています。