大きな地震が発生した際に懸念される被害を以下にまとめます。
・ビル内部の揺れと倒壊
鉄筋の高層ビルの室内では、本棚や机などの家具が倒れ、凶器と化します。耐震性の低いビルは倒壊します。また、長周期地震動
発生時には高層ビル内の揺れは地上よりも大きくなる可能性があります。
・木造家屋の倒壊と火災
木造家屋の密集地で耐震化されていない家屋は次々と倒壊。さらに火災が発生し、住宅地は炎に包まれます。阪神・淡路大震災や
熊本地震でも、木造家屋の倒壊が多く見られました。激しい揺れが十数秒ほど続くだけでも、家屋を押し倒す強い破壊力があるの
です。軟らかい地盤に建っている重い家屋では、特に揺れが強くなる可能性があります。
・液状化現象
湾岸の埋め立て地や河川の沿岸などでは「液状化現象」が発生。人々の避難や緊急車両の通行が妨げられます。傾いて全壊となる
住宅は、液状化が発生した地域では多数に上ることが予想されています。
・交通機関と帰宅困難者
大きな揺れで、道路や線路が深刻なダメージを受けます。鉄道やバスなど公共交通機関はすべてストップ。
大都市圏では多数の帰宅困難者が発生します。
ターミナル駅など人が集中する場所では『群衆雪崩』の発生が懸念されます。
・避難所の定員オーバー
避難所の収容人数は、その自治体に住む全住民分用意されているわけではありません。
どこの自治体でも、基本は自助、すなわち自宅で何とかして欲しいというのが本音です。
ただ、基本的な準備の呼びかけは3日分の食料と飲料水、在宅避難者の備蓄が減ってくる4日目から1週間後が避難所利用者のピーク
になると考えられています。
また、近隣に幹線道路や鉄道などを抱える避難所では、一時的に帰宅困難者が利用する可能性があります。
しかしながら、避難所の設定をしている自治体では、まったくと言っていいほど、このことを考慮していないため、混乱が生じる
ことがあります。
すなわち、避難所において設定されているキャパシティをオーバーするのです。
多くの避難所は小学校などの公共建築物です。そして、そこに備蓄されている物資は在校している学生の数未満であることがほと
んどです。避難者が多くなればなるほど、物資は早くなくなりますので、公助が必要となるのです。
・断水
断水は地震の規模にもよりますが、広い範囲で生じる可能性があります。東京都では地震発生
から17日後に復旧はほぼ完了しますが、下水道が復旧されるまで水を流すことができません。
・停電
震度6弱以上の場所では、電柱や送電線が壊れ、広範囲で停電します。復旧作業は1週間ほどで完了するものの、場所によっては
長期化する場合もあります。特に送電機能の迂回経路が存在しない場所では、ピンポイントの復旧が必要になりますので、長期化
する可能性があります。
・通信障害
通信船が直接遮断されてしまうことになる固定電話はもちろん、携帯電話やインターネットも地震発生直後から数日間はつながり
にくくなります。被害状況によっては、さらに長期化する地域もあります。
・不明者確認の困難性
区域ごとに指定避難所がありますが、住民に対してどこを利用するのかが周知徹底されていないことと、緊急時にはそのような余
裕がないことから、被災時にはそうした区分は守られなくなります。
すると、どこに誰がいるのかについて把握が困難になります。通信障害の元では、迅速な連絡は不可能になりますので、無事な人
間の把握と行方不明者、要救助者の人数把握が自治体担当者のキャパシティをはるかにオーバーします。
本来であれば、町内会や自治会などの自治組織がこのサポートを行うのですが、自治組織には地域住民の名簿が自治体から提供さ
れていません。
自治組織では自分たちの組織の会員(名簿に記載されているのは世帯主のみ)しかわからないのです。
このため、家族構成やその年齢が分かりませんから、そのエリアにおける住民たちの中に、非常時には助けを必要とする人がどの
くらいいるのかということが正確には把握できていません。
近所付き合いのしっかりとある地域では、どこの家にお年寄りが何人いて、体の不自由な方が何人いて、乳幼児が何人いると把握
している場所もあるでしょう。ですが、それは限定された場所のみでのことです。
つまり、避難者と自宅待機者と行方不明者、要救助者という区別は、自治体との通信が途絶している避難所運営側では把握できな
い可能性が高いということになるのです。
兵庫県南部地震の際には、被災して閉じ込められた人など様々な事情で避難が困難となった人々が近隣住民によって助けられた、
というケースが多数ありました。被災時には、こうした共助が行われることも期待されているのです。
情報不足については、自治体の準備が整って、支援が入れば解消されることだと思いますが、それがいつ入るのかについては、災
害の規模によって異なりますので、正確な時間はわからないというのが現状です。
大多数の災害慣れしていない自治体が、早急な対応を実施できるとは思えませんので、大規模災害時には数週間は必要、というこ
とになる可能性があるのです。
以上のように、被災初期には様々な問題が生じます。あらかじめ、こうしたことがあるということを踏まえたうえで、避難所の使
い方を考えてみてはいかがでしょうか。
ちなみに東京都では、首都直下地震が発生した場合に、避難者がおよそ299万人、帰宅困難者がおよそ453万人発生すると想定して
います。