気候変動による海面の平均水位の上昇に備えるため、防潮堤の高さを2100年までに現在の天端高が荒川工事基準面(A.P.)に対して4.6m~8mであるものを5.6m~8mまでかさ上げする計画を東京都港湾局がまとめました。
これは2100年までに平均気温が2℃上昇するという考え方を基にしたもので、この気温上昇による海面の平均水位上昇に対応することを目的として、現在よりも最大59cm高くなるとされる海水の平均水位が高潮時の海面上昇や、中心気圧930ヘクトパスカルの大型台風を想定した整備となっているということです。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/01463/
ですが、東京湾にはこれ以外にも心配事があります。
令和3年に観測された高潮位の1位はA.P.+2.53mでした(8月8日台風9号の影響:通常時の高潮位は12月1日のA.P.+2.27m)。
首都圏直下地震や首都圏沖で発生する地震のうち、複数の地震で津波の発生が懸念されています。東京湾は水深が浅いため津波が発生しても津波高は大きくなりにくいのですが、それでも3m弱程度の大きさにはなる可能性があります。
この数字は、決して大きなものではありませんが、それでも防潮堤を乗り越えるないしは河川等から回り込んで破壊しうる可能性がある、そう考えられます。
上図は、東京都が平成24年に公表した首都直下地震等による東京の被害想定
(https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/taisaku/torikumi/1000902/1000401.html)から、元禄地震時の津波について最大津波波高を示したものです(現行の東京都の被害想定は令和4年版ですが、令和4年版からは元禄地震の被害想定が除かれていますので、津波波高が最大値であるこちらを利用しています)。
先に述べた最高観測高潮位が2.53mで品川区の最大津波高2.61mを加えると5.14mとなり、これに先に述べた潮位上昇分の0.59mの増加を加えると5.73mとなります。
この数字を考えると、品川区の港南地区における現在の防潮堤天端であるA.P.+4.6mや計画での5.6m~5.9mでは微妙な数字となります。
むろん、高潮に台風に地震が重なるということは相当運が悪くないと発生しないとは思いますが、
ではあっても、最悪を想定しておく必要があると思います。
注)ここでは触れていませんが、全水門が閉鎖された場合と全水門が閉じられなかった場合で数字が変わります。先の図は全水門閉鎖時の数字です。
ただ、地震の規模が大きな場合には、発生予測が困難である地震に伴う地盤の隆起や沈降が発生する可能性があるため、その場合にはこの数字は地盤の動きとともに変化します。
このように津波の予想は過去の地震を基に、シミュレーションされた数値で予測さていますので、地震規模が大きい場合や震源の場所によっては想定値が変わります。
このため、東京湾での津波に影響を受けることが想定されるエリアにお住まいの皆さんは、十分な準備をしておくことをお勧めします。