地盤地震学会

活断層がない場所で発生する地震

最近の地質時代に繰り返し活動し、今後も活動する可能性のある断層を「活断層」と呼びます。活断層にはそれぞれ特徴があり、活動の周期や1回に動く量 (変位量) が断層ごとにおおよそ決まっています。大きな被害を及ぼす地震の場合、断層の変位量は数mからときには10m以上に及ぶことがあります。

以前、地震調査研究推進本部が作成した資料では、東京湾北縁起振断層と呼ばれる活断層が東京湾に面する千葉県船橋市から千葉市中央区に連なる形で記載されていました。

しかし、その後の地震調査研究推進本部の調査で活断層ではないと判断されています。

ただ、この周辺部では千葉県北西部を震源とする地震が、毎年何回か発生しています。

*アイキャッチ画像 活断層でないと判断された東京湾北縁起振断層:産業技術総合研究所HP内活断層データベースより引用

2022年7月29日、千葉県北西部を震源とする地震:最大震度2(観測地点:横浜市港北区日吉本町)

*気象庁HP地震情報内震源・震度情報より引用

2022年4月4日、千葉県北西部を震源とする地震:最大震度3(観測地点:埼玉県宮代町笠原、茨城県坂東市岩井、千葉県富津市飯野、神奈川県横浜市旭区今宿東町、神奈川県箱根町湯本など。震源に近い千葉県鎌ケ谷市新鎌ヶ谷では震度3でしたが、震源から同じくらいの距離にある市川市八幡では震度2でした)

*気象庁HP地震情報内震源・震度情報より引用

2021年10月7日、千葉県北西部を震源とする地震:最大震度5強(観測地点:埼玉県宮代町笠原、埼玉県川口市三ツ和、東京都足立区伊興、なお震源に近い千葉市中央区中央港では震度5弱、千葉市美浜区稲毛海岸では震度4でした)

*気象庁HP内震度データベース検索より引用

*2021年10月7日の地震と2022年7月29日の地震の震源はほぼ同じ場所でした(1km以内)。

以上、3件の地震は千葉県北西部を震源とする、とされており、東京湾北縁起振断層が存在するとされる付近を震源としています。

この周辺部では、2021年8月1日から2022年7月31日までの1年間に以上3件を含めて12回の有感地震が発生しており、関東南部における地震の巣の一つとなっています。

 

上記3件の地震は、いずれも震源深さが60km以上とやや深く、このため異常震域と呼んでもいいような揺れ方が発生しています(3件とも震源付近より震源から遠い場所での揺れが大きい場所があります)。

この付近では2005年7月23日にもM6.0、震源深さ73km、最大震度5強の地震が発生しています。

 

なお、ひとつの考え方ですが1855年安政江戸地震の震源地もこの付近だったとする説があります。

https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2016/2016025.html

清水建設(株)の研究によるものです。

上記資料では、安政江戸地震は7月29日の震源付近に長さ36km、幅27kmの逆断層が存在することによって発生した地震であると想定しています。

 

2021年10月7日の地震はM5.9で最大震度5強だったので、もしもM7.0の地震が発生すると、10月7日の地震の45倍のエネルギーを持った地震が発生することになり、対策がなされていないと大きな被害が発生する可能性がある、ということになります。

 

本事例のように、周知の断層がない場所でも地震は発生しうるということ、また、その地震が継続的に発生し、なおかつ規模の大きな地震が発生する場合、断層などが存在する可能性があることを示しているということになります。

 

国から公表されている活断層が近隣にないからと、安心することはできないのがこの日本という国です。皆様も十分な準備をお願いいたします。

関連コラム