地盤地震学会

スロースリップ

ドラマ「日本沈没」で、スロースリップという言葉が出てきます。

ドラマの中では、あまり説明されていませんので簡単にご説明いたします。

スロースリップとは、通常の地震時に発生する断層の「すべり」より、はるかに遅い速度で断層がすべることを言います。

 

 

 

「通常の地震」と「スロースリップ」(地震調査研究推進本部:地震と津波の知識より引用)

スロースリップは、スロー地震と呼ばれる現象の一つです。

通常の地震では、断層が高速にずれ動くことで、蓄積されたエネルギーが解放され、そこから発生した地震波によって私たちが揺れを感じることになります。

一方、スロー地震は、プレート境界の断層がゆっくり動く現象です。普通の地震では、数分程度で動く範囲を数日から数か月かけて動くので、有感地震とはなりません。

ただ、断層が動いていることに変わりありませんので、強いエネルギー(地震ではその規模をマグニチュードMwであらわす)が解放されます。

 

2014年1月頃に房総半島沖で発生したスロースリップでは、Mw6.5程度のエネルギーが放出されたと考えられています。ちなみに2018年大阪北部地震ではMw5.6で、北海道胆振東部地震ではMw6.6でした。エネルギーは同等ですが、震源付近における継続時間が13秒程度の北海道胆振東部地震に対して、同じエネルギーを放出するのに数十日間かかったスロースリップでは揺れによる被害が生じなかったことも頷けます。

 

このようにスロースリップによる地震では、被害が生じる可能性は低いと考えられています。しかし、大地震が発生するきっかけとなる可能性があります。

2011年の東北地方太平洋沖地震の際、本震2日目に発生した前震(Mw7.3)の後にスロースリップが発生し、それが本震付近の断層に影響し、断層のすべりを促進させた可能性があることがこれまでの研究でわかっています。

 

ただ、2014年の事例で示したようにスロースリップが発生したから、大地震が発生する、というわけではありません。

また、1992年の岩手県はるか沖合の地震(Mw6.9)の地震発生後、約1日間かけてスロースリップ(Mw7.3~7.7)が生じていますが、スロースリップ終了後にいくつかの地震発生はありましたが、巨大地震が発生することはありませんでした。

つまり、地震の発生はスロースリップの引き金になる可能性はあるけれど、スロースリップが発生したら必ず巨大地震を伴う、というものではないということを知っておいて欲しいと思います。

 

今後スロースリップなどについては、さらに研究が進んでいくと考えられますので。その成果に期待したいと思います。

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