地盤学会

気象庁の警報について

令和6年台風10号は日本各地で大きな被害をもたらしました。

その際、気象庁から多くの警報などが発表され、その種類の多さに困惑された方もいたのではないでしょうか。

実は気象庁の警報には以下のような種類があります。

1.特別警報

気象等の特別警報の種類と内容

警報の発表基準をはるかに超える大雨等が予想され、重大な災害が発生するおそれが著しく高まっている場合、特別警報を発表し、最大級の警戒を呼びかけます。気象庁では以下の6種類の特別警報を発表しています。

大雨特別警報 大雨特別警報は、台風や集中豪雨により数十年に一度の降雨量となる大雨が予想される場合に発表します。特に警戒すべき事項を標題に明示して「大雨特別警報(土砂災害)」、「大雨特別警報(浸水害)」又は「大雨特別警報(土砂災害、浸水害)」のように発表します。
大雪特別警報 大雪特別警報は、数十年に一度の降雪量となる大雪が予想される場合に発表します。
暴風特別警報 暴風特別警報は、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により暴風が吹くと予想される場合に発表します。
暴風雪特別警報 暴風雪特別警報は、数十年に一度の強度の台風と同程度の温帯低気圧により雪を伴う暴風が吹くと予想される場合に発表します。
波浪特別警報 波浪特別警報は、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により高波になると予想される場合に発表します。
高潮特別警報 高潮特別警報は、数十年に一度の強度の台風や同程度の温帯低気圧により高潮になると予想される場合に発表します。

 

2.警報

気象等の警報の種類と内容

警報とは、重大な災害が発生するおそれのあるときに警戒を呼びかけて行う予報です。気象庁では以下の7種類の警報を発表しています。

大雨警報 大雨警報は、大雨による重大な土砂災害や浸水害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。特に警戒すべき事項を標題に明示して「大雨警報(土砂災害)」、「大雨警報(浸水害)」又は「大雨警報(土砂災害、浸水害)」のように発表します。雨が止んでも重大な土砂災害等のおそれが残っている場合には発表を継続します。
洪水警報 洪水警報は、河川の上流域での大雨や融雪によって下流で生じる増水や氾濫により重大な洪水災害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。対象となる重大な洪水災害として、河川の増水・氾濫及び堤防の損傷・決壊、並びにこれらによる重大な浸水害があげられます。
大雪警報 大雪警報は、降雪や積雪による住家等の被害や交通障害など、大雪により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。
暴風警報 暴風警報は、暴風により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。
暴風雪警報 暴風雪警報は、雪を伴う暴風により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。暴風による重大な災害のおそれに加え、暴風で雪が舞って視界が遮られることによる重大な災害のおそれについても警戒を呼びかけます。ただし「大雪+暴風」の意味ではなく、大雪により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときには大雪警報を発表します。
波浪警報 波浪警報は、高波による遭難や沿岸施設の被害など、重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。
高潮警報 高潮警報は、台風や低気圧等による異常な潮位上昇により重大な災害が発生するおそれがあると予想したときに発表します。

 

3.土砂災害警戒情報

土砂災害警戒情報は、大雨警報(土砂災害)の発表後、命に危険を及ぼす土砂災害がいつ発生してもおかしくない状況となったときに、市町村長の避難指示の発令判断や住民の自主避難の判断を支援するよう、対象となる市町村を特定して警戒を呼びかける情報で、都道府県と気象庁が共同で発表しています。危険な場所からの避難が必要な警戒レベル4に相当します。土砂災害警戒情報が発表された市町村内で危険度が高まっている詳細な領域は土砂キキクル(大雨警報(土砂災害)の危険度分布)で確認できます。

*以上、特別警報、警報、土砂災害警戒情報の解説は気象庁ホームページより引用させていただきました。

 

このように警報・特別警報・土砂災害警戒情報(レベル2からレベル5)と土砂災害については6種類もの警報があり、他の警報についても2種類はあるということになります。また、このほかに記録的短時間大雨警戒情報、洪水警報以外に指定河川洪水予報、線状降水帯発生予測情報、などがあり、これらが状況に応じて発表されることになります。

こうした情報については、単なる警報とは異なる基準に基づいて発表されるものであり、いろいろな情報が出てくることに戸惑われる方も多いと思います。

このため、これらの情報が発表されたからと慌てるのではなく、日ごろの準備に基づいて避難等の準備をして、自治体からの避難勧告や避難指示が出た際に速やかに行動できるようにしておいて欲しいと思います。

 

 

※参考資料

*指定河川洪水予報

※警戒レベルとの関係
氾濫発生情報・・・【警戒レベル5相当】
氾濫危険情報・・・【警戒レベル4相当】
氾濫警戒情報・・・【警戒レベル3相当】
氾濫注意情報・・・【警戒レベル2相当】

※各情報を参考にとるべき行動について

情報 とるべき行動 警戒レベル
氾濫発生情報 地元の自治体が警戒レベル5緊急安全確保を発令する判断材料となる情報です。災害がすでに発生していることを示す警戒レベル5に相当します。災害がすでに発生している状況となっています。命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保してください。 警戒レベル5相当
氾濫危険情報 地元の自治体が警戒レベル4避難指示を発令する目安となる情報です。危険な場所からの避難が必要とされる警戒レベル4に相当します。災害が想定されている区域等では、自治体からの避難指示の発令に留意するとともに、避難指示が発令されていなくても自ら避難の判断をしてください。 警戒レベル4相当
氾濫警戒情報 地元の自治体が警戒レベル3高齢者等避難を発令する目安となる情報です。高齢者等は危険な場所からの避難が必要とされる警戒レベル3に相当します。災害が想定されている区域等では、自治体からの高齢者等避難の発令に留意するとともに、高齢者等以外の方も避難の準備をしたり自ら避難の判断をしたりしてください。 警戒レベル3相当
氾濫注意情報 避難行動の確認が必要とされる警戒レベル2相当です。ハザードマップ等により、災害が想定されている区域や避難先、避難経路を確認してください。 警戒レベル2相当

 

国や都道府県が管理する河川のうち、流域面積が大きく、洪水により大きな損害を生ずる河川については、 国土交通省または都道府県と気象庁が共同で、河川を指定して洪水予報を行っています。
「氾濫注意情報」は「洪水注意報」に相当、「氾濫警戒情報」、「氾濫危険情報」、「氾濫発生情報」は 「洪水警報」に相当します。

・線状降水帯について

「顕著な大雨に関する気象情報」の発表基準を満たすような線状降水帯による大雨の可能性がある程度高いことが予想された場合に、半日程度前から、気象情報において、「線状降水帯」というキーワードを使って呼びかけます。

この呼びかけは、警戒レベル相当情報を補足する解説情報として発表します。

線状降水帯が発生すると、大雨災害発生の危険度が急激に高まることがあるため、心構えを一段高めていただくことを目的として線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけを行います。この呼びかけだけで避難行動をとるのではなく、ほかの大雨に関する情報と合わせてご活用ください。大雨災害に対する危機感を早めにもっていただき、ハザードマップや避難所・避難経路の確認等を行っていただくことが考えられます。

線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけの留意点

  • 線状降水帯による大雨の正確な予測は難しく、この呼びかけを行っても必ずしも線状降水帯が発生するわけではありませんが、線状降水帯が発生しなくても大雨となる可能性が高い状況といえます。
  • 線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけがあったときも、地元市町村が発令する避難情報や大雨警報キキクル(危険度分布)等の防災気象情報と併せて活用し、自ら避難の判断をすることが重要です。
  • 線状降水帯だけが大雨災害を引き起こす現象ではないことから、線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけがなくても大雨による災害のおそれがあるときは、気象情報や早期注意情報、災害発生の危険が迫っているときは大雨警報キキクル(危険度分布)等の警戒レベル相当情報など、防災気象情報全体を適切に活用することが重要です。

 

線状降水帯による大雨の半日程度前からの呼びかけ例

大雨が予想される際に発表される全般気象情報、地方気象情報、府県気象情報に、線状降水帯発生の可能性について言及します。下に示すのは、地方気象情報の発表イメージです。府県単位を基本に(※)、対象となる府県名を列挙して記述します。見出しのみの発表とすることもあります。

※北海道や沖縄県では、府県予報区単位で発表します。鹿児島県では奄美地方を、東京都では伊豆諸島と小笠原諸島を区別して発表します。

*今回の資料で使用した図表は、気象庁のホームページより引用させていただきました。

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