地盤地震学会

謎の津波はなぜ起きたのか?

大きな地震が発生していないにもかかわらず、2023年10月9日に太平洋側の広範囲で津波注意報が発表されました。

津波は、東日本大震災のような大きな地震に伴って発生するものを想像しがちですが、それ以外の現象が原因で発生することがあります。

  • 山体崩壊などによって大量の土砂が海に流れ込むことによって発生する津波。
  • 海底地すべりなど、海底で発生した地形変動により発生する津波
  • 「トラップドア断層破壊」と呼ばれる現象で発生する津波
  • 海底火山の噴火によって生じる津波

などが、津波発生の原因として挙げられます。

*上図は東京大学地震研サイト内、地震規模に比べて大きな津波を繰り返し引き起こす火山性地震の発生メカニズム:海底火山・須美寿カルデラにおける「トラップドア断層破壊」より引用させていただきました(ここでいう須美寿カルデラは、鳥島から100kmほど北方に位置する直径8kmほどの火山性陥没地形(カルデラ)を指します。2015年にトラップドア断層破壊による津波を引き起こしたと考えられています)。

 

今回発生した津波は上記のどれかが単独、ないしは複合して発生したものではないかと考えられています。

このような現象は、火山の大きな噴火を除くと地震計では感知できないか、感知しても小さな地震としてしか計測できない特徴があります。

そのため、実際の波の高さが検知されてからの注意報発令となったために、津波が到達ないしは到達寸前という事態で、津波注意報発令と注意警報発令になったのです。

今回、実際に観測されたのは数十センチの津波でしたが、海底における変動幅が非常に大きい、噴火の規模が非常に大きいなどの事象が発生すれば予告なしに大きな津波が押し寄せる可能性があります。

こうした海底での変動発生に対して、それを観測可能なシステムの開発と配備が待たれるところです。

先日の10月9日では、津波注意報が発表された後も、海沿いに釣り人が多く残っていた光景がニュースなどで放映されていました。津波注意報・警報は危険なものであると認識して避難するなどの対応をおこなって欲しいと思います。

 

*参考文献

毎日新聞 12月1日 静かに押し寄せた「謎の津波」正体は 浮かんだ未知の海底地形https://mainichi.jp/articles/20231129/k00/00m/040/093000c

NHK {明日をまもるナビ:謎の津波はなぜ起きたのか}                   https://www.nhk.or.jp/ashitanavi/article/19302.html?fbclid=IwAR2Gdmy9B8peYeCoOiMf4cKWtsqRDPhhjGU-IHF-qD8csXuoCsqDJElxEK4

 

 

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