地盤地震学会

津波の不思議

日本からおよそ8000km離れた、南太平洋のトンガ近海で発生した海底火山の爆発が波紋を広げています。

実際に潮位が高くなることが観測されてから津波注意報が発令された、極めて珍しい事例です。

気象庁が津波の発生原因として監視しているのは、地震や海底地すべりに起因するものです。

気象庁は、今回のように海底火山の噴火で津波が発生することを把握していなかったことが、津波注意報の発令を遅らせた要因となっています。

火山の噴火に伴う津波というと、陸上の火山噴火時に生じる山体崩壊という現象があります。火山の噴火時に山体が部分又は全体的に崩落して、大量の土砂が海に流れ込むことによって津波が生じることが知られています。

この現象は、日本でも発生しています。有名なのは1792年に雲仙普賢岳が噴火、火山性地震が発生し、その後に眉山と呼ばれる部分が崩壊して有明海に3億4千万㎥ともいわれる土砂がなだれ込んだことで、津波が発生しました。

この津波は島原を襲うと対岸の肥後天草に到達した後、反射して再び島原に到達するなどして、島原と肥後でおよそ1万5千名の死者行方不明者が発生することになりました。

*ご興味のある方は「島原大変・肥後迷惑」で調べてみてください。これでも正式な名称です。

この眉山の崩壊のような場合、土砂の崩落という具体的な現象が発生しているので津波の発生が予測できますが、海底火山の噴火の場合には具体的に水への力が働いたことが分かりにくいので、津波の発生は予測できない可能性があります。

噴火後すぐにトンガや周辺の島々に津波が押し寄せたという情報があれば、また違ったのかもしれませんが、正確な情報の把握には時間がかかるために津波の注意報・警報を発令するには間に合いません。

ただ、今回の経験から海底火山の噴火でも津波相当の現象が発生することが分かりましたから、日本の領海にも無数に存在する海底火山の噴火が生じたときの参考となります。

日本でも火山の巨大爆発は過去に生じており、有史以前ですが、およそ9万年前の阿蘇カルデラの噴火、およそ3万年前の姶良カルデラ(鹿児島湾と桜島付近)の噴火、およそ7300年前の鬼界カルデラ(鹿児島県南方沖、薩摩硫黄島・竹島が外輪山に相当)の噴火が有名です。

なお、鬼界カルデラの噴火では津波の痕跡が発見されたという研究があります。

 

すなわち、日本にとっては他人ごとではないので、こういう災害が日本周辺でも発生しうるということを知っておいて欲しいと思います。

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