今年は、天候が異常である。と言われています。なぜか、ここ数年は毎年のようにこの言葉を聞いているような気がします。そして、だいたい異常気象について話されるときに、エルニーニョ現象、ラニーニャ現象という言葉が使われます。これらは南米ペルー沖の太平洋上で海水温が上昇するのがエルニーニョ、逆に低下するのがラニーニャです。これに伴いインドネシア付近と南太平洋東部で、海面付近の気圧が連動して変化する南方振動という現象が強く関係していることがわかってきています。
では海水温が変化するとなぜ、異常気象が起こるのかというと、海水温は大気の温度に影響します。大気の温度が変化すると、それは気圧の変化につながります。気圧が変化すると、大気の流れに変化が生じて暖かい空気や冷たい空気が隣接するエリアに流れ込み、それが連鎖反応を起こして地球規模での気圧・温度の変化をもたらすということになります。
2017年から今年の初めまでは、ラニーニャ現象が観測されていたため、今夏は猛暑になるのではないか、という予想が3月ころには出ていました。まあ、実際にその通りになったわけですが、この原因の一つとして考えられていたのが、強力な太平洋高気圧の存在です。
梅雨時から太平洋高気圧が力を持っており、これによって北上を余儀なくされた梅雨前線が、大陸方面で大きな力を持っていたチベット高気圧によって日本列島上に固定されて、梅雨前線が居座る形になったことが西日本豪雨の一因であると考えられています。
そして大雨が続けば、それは土砂災害の原因になります。今年の豪雨では、各地において大規模な土砂災害が発生して、広島県呉市などで多くの犠牲者が出たのは、記憶に新しいと思いますが、何も今年だけに生じたわけではありません。平成26年広島市安佐南区で発生した土砂災害では77名の死者・行方不明者が発生しています。
土砂災害としてまとめられていますが、その種類としては地滑り、土石流、崖崩れなどがあり、地形や状況によって発生する災害は異なります。
土石流は、増水した河川の水の力によって河川周囲にあった土砂が水と一緒に流される、地滑りなどによって崩落した土砂が河川に沿ってそのまま流れる、崖崩れなどによって一時的に川の流れがせき止められ、そこに水がたまることによってせき止めた土砂では水の重みに耐えられなくなり、一気に水と土砂が流される。というものがあります。
降雨時の地滑りや土砂崩れは、土の中に多くの水が浸み込むことで、土砂の重量が大きくなり、それを支えられなくなった部分から上側が崩壊することで生じます。
崖崩れも同様に、崖にしみ込んだ水によって重くなった土砂を崖を構成する地盤が支えられなくなって、崩壊するものです。
広島県をはじめとして広い地域に存在する花崗岩という岩は、もともとは非常に硬く、その状態では簡単には壊れませんが、強く風化すると真砂土(マサド)と呼ばれる状態になります。ガーデニングをする方は、マサドがホームセンターなどでも売られていることをご存知かもしれませんが、固結した状態から様々な大きさに分離した状態になります。
この状態になると固結した状態とは異なり、粒粒の間の隙間に水が入り込みやすくなり、しかも水に触れたり、空気に触れることでさらなる風化を促進します。
そして、粒粒が接触することで働いていた重量を支える力を、内部に入り込んだ水が弱めたり失わせる(粒粒を引き離して軽いものから水と一緒に流してしまう)作用が発生します。
普段は水があっても支えられていた重量を、降雨で一時的に多く入り込んだ多くの水によって支える力がなくなれば、支えられなくなった場所より上側は崩れることになります。
これはマサド地盤だけに限らず砂地などでも生じます。
そして、このような現象は狭い限定された範囲で生じることもあれば、山が一つ丸ごと流れるような規模で発生することもあります。
記録的大雨が降るたびにこのようなニュースに接すると、筆者の感覚では天災ではなく人災ではないかという考えが浮かぶようになります。
今年の西日本豪雨でも死者118名(国交省平成30年7月豪雨による土砂災害概要より引用)を出し、政府は被災者支援を打ち出していますし、再発防止を口にはしていますが、4年前に広島県で土砂災害が発生した際にも同じことを言っていたと思います。このような災害による悲劇が繰り返されないことを切に願って、今回は筆をおかせていただきます。